オフィスビルやテナント施設でエアコンを新設する際、見落とされがちなのが室外機の設置スペースとその導線の確保です。特にオフィスビルなどでは、室外機を屋上に設置するケースが多く、そこから室内機へとつながる冷媒管・電源の引き込みルートをどう確保するかが工事の成否を分けるポイントになります。
今回は、弊社で施工を担当した「屋上のハト小屋を貫通して室外機を新設した内装設備工事」の一連の流れをご紹介します。
1. 屋上に室外機設置:スペースの確保が第一関門
エアコンの新設では、室内機の設置場所に目が向きがちですが、室外機の置き場確保はより現場の制約を受けやすい要素です。今回の案件では、屋上に十分なスペースがあり、そこを利用して室外機を設置することとなりました。
2. ハト小屋の貫通作業:鉄筋探査からコア抜きへ
屋上から屋内への配管ルートには、既存の「ハト小屋」と呼ばれる立ち上がり構造を使用しました。これは本来、配管・配線の引き込みを想定した空間ですが、構造体である以上、事前の鉄筋探査が必要です。
-
レントゲン検査が物理的に困難なため、鉄筋探査機(電磁波レーダー)を使用。
-
ハト小屋は元々「貫通前提」の設備であり、探査結果をもとにコア抜き(孔開け)作業を実施。
貫通後に取り出したコア材からも、鉄筋の干渉がほとんどない設計であることが確認されました。
3. 冷媒管・電源ケーブルの引き込みと配管センス
続いて、開けた孔から電源ケーブルと冷媒管を対象フロアの室内機まで引き込んでいきます。
-
冷媒管のルートは、最短かつ曲げ施工性が良いようにレイアウト。
-
ガルバリウム鋼板で仕上げを行うことを前提に、美観とメンテナンス性も配慮。
ここには職人の経験とセンスが大きく問われる工程です。
4. 冷媒ガス注入・試運転・仕上げへ
配管が完了したら、エアコンの心臓部ともいえる冷媒ガスの充填作業と試運転を行い、正常に稼働するかを確認します。
最終工程では、配管を錆びにくいガルバリウム鋼板で完全手巻き仕上げ。屋上の過酷な環境に耐えるよう、耐候性と防錆性に優れた素材でしっかりと保護します。
-
ハト小屋の孔の隙間も、丁寧に塞ぎます。
-
すべて手作業で行われるため、施工品質=職人の腕が問われる工程です。
5. エアコン新設・室外機設置はC工事対応も可能です
今回のようなケースでは、内装工事(C工事)として対応可能な場合もございます。
-
空調設備が未整備の状態での新規入居をご検討の方
-
室外機スペースや導線確保に課題があるテナント管理者の方
まとめ:
屋上ハト小屋の貫通から配管・仕上げまで、空調新設には意外と多くの専門性と現場判断が求められます。アロワーズでは、設計段階から施工完了まで一貫して対応し、オフィスの快適環境をつくるお手伝いをいたします。
ぜひ、現地調査・御見積からお気軽にご相談ください。

一級建築士 / 1級建築施工管理技士 / 宅地建物取引士 / 認定ファシリティーマネジャー
千葉大学工学部を中退後、2001年に24歳で株式会社アロワーズを創業。「働く環境こそが生産性向上の唯一の手段」という信念のもと、23年間にわたりオフィスの設計・デザイン・施工をワンストップで手掛ける内装工事業を行っている。